公開: 2024年2月6日
更新: 2024年2月6日
人類史の中で、1,000年間続いた中世時代、経済の成長はほとんど無かったと言われています。12世紀にイタリアのボローニャに大学が誕生、16世紀のヨーロッパに起こった宗教改革と印刷機の発明によって、ヨーロッパ世界の知的水準は、目覚ましい勢いで拡大し始めました。その結果として、18世紀に、イギリスで産業革命が起こり、資本主義経済が誕生しました。産業革命が始まって以来、世界は、年率にして平均約2パーセントの成長率で、GDPを増加させるようになりました。
その年率2パーセントの経済成長を可能にしたのが、人類全体での知識の増大でした。印刷技術の発達で、人間同士の知識の伝達速度が著しく早くなったため、単位時間当たりの知識の増大量が大きくなったのです。その増加は、定数の時間乗に比例しています。1年間に2割の速さで知識が増えれば、2年間で約1.4倍、3年間で約1.7倍になります。この地域の増加量に比例して、一般の人々が知っていなければならない知識の量も増加します。経済も発展しますが、人々が知らなければならない知識の量も、それと同じ速度で増えてゆくのです。
そのような知識の量は、ある時までに発表された論文の数、ある時までに申請された特許の数、ある時までに出版された印刷物の総ページ数などで測れるでしょう。一般の人々が知らなければならない知識を得るためには、学校で学ぶ知識が基礎になります。その基礎知識も、時代とともに、増えてゆくのです。
そのような背景から、世界の国々では、義務教育で教えなければならない知識として、「何を教えるべきか」、それらを「どのようにして効果的に教えればよいか」について、模索が続いています。さらに、ある社会が、他の社会との競争に勝とうとすれば、自分たちの社会で生み出された新しい知識が、競合する他の社会で生み出されたものよりも、優れたものであることを説明する必要があります。その説明力を向上させる知識も、義務教育で教えなければなりません。
米国のある公立小学校では、4年生の生徒たちに、自分たちが考え出した新しい方法や工夫を、特許の新制と同じように書かせ、他の生徒たちに説明する授業を実施していました。それは、米国社会の底力を維持するために、重要だと考えられていたからです。